地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律

1. 法律の全体像と目的

地域生物多様性増進法は、2025年4月1日より施行された生物多様性の損失を食い止め反転させる「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の実現を目的とした法律です。

  • 目的: 地域における生物多様性の増進(維持、回復、創出)活動を促進し、豊かな生物多様性を確保することで、国民の健康的で文化的な生活に寄与する。
  • 背景: 2030年までに陸と海の30%以上を保全する国際目標「30by30」の達成や、保護地域以外の里地里山・企業緑地(OECM)の活用が求められている。
  • 基本理念: 生物多様性が人類存続の基盤であることを認識し、自然環境の保全と経済・社会の持続的発展の両立を図る。また、国、地方公共団体、事業者、国民、民間団体が密接に連携して取り組む。

2. 各主体の責務と努力義務

各主体は、以下の役割を担うことが定められています。

主体主な責務・努力義務
施策の総合的策定、資金確保、技術的助言、科学的知見の充実。
地方公共団体区域の状況に応じた施策の推進、活動の実施、情報提供。
事業者事業活動における生物多様性への理解、事業に応じた活動の実施。
国民生物多様性への理解を深め、活動の実施や協力に努める。

3. 計画認定制度の仕組み

民間企業やNPO、市町村が作成する活動計画を主務大臣が認定する制度です。

3.1 計画の区分

  • 増進活動実施計画: 企業やNPO等が単独または共同で作成するもの。
  • 連携増進活動実施計画: 市町村が企業やNPO等と有機的に連携して作成するもの。

3.2 三つの活動類型

活動内容は以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 維持タイプ: 既に良好な生物多様性が存在する場を維持する活動(保護地域以外はOECMとして国際登録される)。
  • 回復タイプ: 過去に損失した、または損失が進行している生態系を再生する活動(例:放置林の再生)。
  • 創出タイプ: 現状で自然がない場所に、在来種が生息できる環境を新たに整備する活動(例:開発跡地の緑化)。

3.3 認定基準と審査プロセス

  • 主な認定基準: 活動内容の妥当性、実施体制の確実性(土地所有者の同意等)、区域の明確性、継続的なモニタリング(原則5年に1回)が求められる。
  • 維持タイプの評価: 豊かな生態系、希少種の生息地、既存保護地域との連結性などの価値を客観的に示す必要がある。
  • 審査の流れ: 独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)が窓口となり、有識者審査委員会や主務省庁(環境省、農林水産省、国土交通省)による審査を経て、大臣が認定する。

4. 促進のための措置と特例

認定を受けた計画には、活動を円滑に進めるための措置が適用されます。

4.1 個別法の特例(ワンストップ化)

以下の法律に基づく許可手続き等が簡素化、または許可されたものとみなされます。

  • 自然公園法 / 自然環境保全法
  • 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律
  • 鳥獣保護管理法
  • 特定外来生物法(防除の認定)
  • 森林法(立木伐採届出)
  • 都市緑地法

4.2 生物多様性維持協定

認定連携市町村は、土地所有者等と長期間の連携活動を行うための協定を締結できます。

  • 効力の承継: 土地所有者が交代しても、新しい所有者に対して協定の効力が及ぶ。
  • 特例: 20年以上の協定の場合、相続税等の評価減の特例に関連する場合がある。

5. 運用支援とガバナンス

  • 支援拠点: 地方公共団体は、関係者間の連携や助言を行う「地域生物多様性増進活動支援センター」の確保に努める。
  • 関連施策との連携: 気候変動対策(CO2吸収)、循環型社会、防災、水循環施策との有機的な連携が求められる。
  • 報告と罰則: 主務大臣は実施状況の報告を求めることができ、虚偽の報告等には30万円以下の罰金が課される場合がある。